小柄でゲームが大好きなA君は25歳の青年です。市から頼まれ、もう我園に通って3年経ちました。
「週5日間働けるよう体力をつけて自分の好きなことを見つけなさい。そしたら卒業だよ」と教えて始まりました。
当初はか細い声で話もあまりしなかった。しかし3か月間の試用期間が済んだ頃、お父さんが訪ねて来られました。
「どんな教育をしていただいたのですか?」
「私が彼に云ったのは、嫌いなことと好きなことを自分で探しなさい。興味がわくことが見つかったら、どうしてなのか観察しなさいだけです」
「息子が随分変わったのです。朝、我々に挨拶をして一緒に朝ご飯を食べるようになったのです」たしかに彼はどんどん変わってきました。
年上のおじさんたちと話も始めました。私と指導員にも自分からいろいろ話しかけて来るようになりました。そして将来イチゴ栽培をしたいのでイチゴを育ててみたいと云ってきました。
何か責任を持たせるために、すべて任せてやらせようと指導員H君と決め、彼のために畝を決めてやりました。そしてマルチを自分で貼り、イチゴの苗を買ってやり任せました。
しかし1ケ月待たずにイチゴは枯れてしまいました。
「なぜ枯れたのか分かったか?」
「いや、分かりません」
「イチゴが泣いているよ!イチゴは定着するまで水を1週間に2回は最低かけてやらないと枯れるよ!」このころは園には1週間に2回通ってきていました。
畑が分散しているので常時同じ畑の作業ではないので無理もないところがありました。
「言ってくれれば畑に回ったのに…」指導員のH君は言いました。
自分の責任だというのを、もう少しきつく言えばよかったかもしれません。しかし20歳を超えた大人ですが、精神的には子供です。
気づくまで待ってやるつもりだったのでこれ以上は言いませんでした。
彼を見ていると、休憩時間はスマホのゲームをやって自分の世界に閉じ籠っていて他人の思惑には気づきません。
毎週ゲーム仲間と組んでスマホゲームをやっていて、徹夜をすることが多いと云います。
他の仲間も仕事して稼ぎながらのようです。A君は親からもらう小遣いでやっているようです。
この時は成長の過程だと、もう少し長い目で見守ろうと思いました。