65歳になったKちゃんの得意技

Kちゃんは小柄でいつもニコニコして話しかけてきます。

「内藤さん!昨日あそこの草を刈っておいたよ!」

「見たよ。奇麗になって片付いていたよ。ありがとうよKさん」

満面の笑顔で答えてくれた。いろいろな性格の人がいるが、丁寧に雑草を片付ける名人である。

最近は目と耳が悪くなって、早くこの仕事は辞めたいと云っている。

今年はワイン用のブドウの収穫に挑戦してもらった。

小粒は我々夫婦で2ケ月掛かって取り除いたので、軸枯れをして実が腐ったのを取り除くだけだ。

Kさんは目が悪いのでその部分を除いた黄色のテープで記した場所だけを収穫してもらった。

それでも部分的に腐食がある房もある。もう1回チェックがいる。Kさんは今年から収穫作業ができたので、褒めてあげたら大変喜んでいた。

Yちゃん同様に人並みの事が出来て、自信をつけたようだ。

いろいろ家庭事情を聴いてみると、両親は亡くなっていて故郷には兄しかいない。

お盆の休みも帰郷したが、今まで浜田駅まで迎えに来ていた兄も今年は来なかったようだ。

タクシー代が偉く高かったと嘆いていた。

彼らの大半が年齢が高くなっていて、当然身内も亡くなっている。兄の家族は関西で生活していて、田舎に兄一人暮らしのようだ。

親が作っていた田を一人で耕作している。Kさんが帰ると労働力と現金を当てにしているようだ。

「兄さんが、法事の金を出してくれと言ってお金がかかってしようがない」

「Kさんも一緒にお酒を飲むんだろう?」

「ビールを飲むが、兄さんのほうが強い」

「なんだかんだでお金がかかる」

どうやら、現金収入のない兄貴はKさんが帰ってきて来るのを当てにしているようだ。

そこまで気が回らないKさんは将来が見通せていないようだ。